2008-01-01から1年間の記事一覧

『BOY A』監督:ジョン・クローリ

(上記タイトルをクリックすると公式サイトより予告編がご覧いただけます) かつて取り返しのつかない罪を犯した少年のその後の物語。 映画であって映画ではなく、しかし、映画そのもの。 希望を語ることが映画だから。 希望を継ぐことが映画だから。 この映…

『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』監督:マーチン・スコセッシ

20代のころミック・ジャガーは、「60歳になっても歌っていますか?」というインタヴューに、「もちろん!」と答えていた。 そのシーンは映画の中にもあって、まさか、60でロックを歌っている?なんて、想像もしなかった。 たぶん、生のステージを見て…

『反貧困〜「すべり台社会」からの脱出』著:湯浅誠

世界には、貧しい人はたくさんいて、 日本の貧困はたいしたことはない。 社会保障があるではないか、 と、おもうひとは多いのかもしれない。 「富めるものと貧しい者が両極端に分化した不平等な私たちの社会は、いとも不思議な眼鏡を生み出し、経済的に上位…

秋冷えの蜘蛛の糸途切れ黒鍵にふれるマーカス・ロバーツ*1の爪 窓のない浴室の小さなバスタブは人魚の棺であるやもしれず # 『光リ射ス、影ニ挿ス』PHOT BY MS.BEE *1:ジャズピアニスト

[美術]『ヴィルヘルム・ハンマースホイ〜静かなる詩情〜』@国立西洋美術館

デンマークのこの画家を知るのははじめてです。 ハンマースホイの描く部屋は彼の内部そのもののように感じます。 建物は肉体の暗喩であり、ローマを旅したときに唯一描いたという『ローマ、サント・ステーファノ・ロトンド聖堂の内部』の不規則な円柱や『室…

『山下陽子展“エチュード ――ポートレイトに潜む夢”』@啓祐堂ギャラリー

コラージュのオブジェ作品。書物の形をしたエチュード。 展覧会の説明には 中世末期、王侯貴族たちが書き物机と書棚などを中心に揃えた小さな部屋(書斎)を「エチュード」と呼んでいたことから想を得て、本をかたどった小箱の中にさまざまな作家たちのポート…

『東逸子ーVANITAS・VERITASー儚きものたちのコレクション』@SAギャラリー

絵本「翼の時間」「月光公園」など独特な幻想世界を描く東逸子さんの個展。 東さんが個展をされることは珍しく、原画を目にするのを楽しみにしていました。 近作を中心にエッティング、水彩など。[rakuten:mikihouse:10001656:image]柔らかく、繊細なタッチ…

『ミッドナイト・ホームレス・ブルー』の休止

リンクしている健次郎さんの『ミッドナイト・ホームレス・ブルー』が休止しました。 コメント欄も休止されていますので、『ミッドナイト・ホームレス・ブルー』からこちらを訪れてくださった方にも読んでいただきたく、ここに書きます。 健次郎さんには、当…

かぎろゐ

アウレリウス・アウグスティヌスの文字列縦断し紙色の虫ページの果てを越え 水廊*1の光やさしくかぎろゐてわがうちにある音をしずめぞ 十一月 隣室のため息の聞こえるアパートの一室ひる闌け 闇の手に掬われるがごと駅頭にかろうじて立てるMemento moriを #…

中山ラビ&ラビ組@吉祥寺スターパインズカフェ

25日、ラビ&ラビ組、ますます磨きがかかってすばらしいライヴでした。 ラビのロック魂は、衰えるところがありません。 バックバンド、ラビ組とのスターパインズカフェでの競演は5年ぶりですが妥協を許さないステージです。 アコースティックギターで歌うと…

年金特別便・・・90点?

みなさん、年金特別便に間違いはありませんでしたか? 間違いの当事者になろうとも思わず、そのままにしていて、そろそろ返信しなければとよくみると、5年2か月分の厚生年金保険の記載がないことに気づきました。 郵便で訂正を送ってもいいのですが、毎日…

グラスに雨はあふれパラソルたおして 海を消してゆくスコール 木漏れ日に落ち葉砕ゐて影を踏む いつか分かってくれるだろう

自立生活サポートセンターもやいの窮状

若年者に対する施策が皆無といっていい状況の中で、生活困窮者やネットカフェ難民の自立支援をしてきた「もやい」が主力後援企業の倒産で、活動が窮地に立たされているということを、「村野瀬玲奈の秘書課広報室」の10月19日の記事で遅ればせながら知り…

[映画]

・クエイ回顧展『ブラザー・クエイの幻想博物館』@イメージフォーラム 10月4日(土)〜17日(金) 『ピアノ・チューナー・オブ・アースクエイク』(10月18日〜)公開記念 ・ベルリンフィル創立125周年記念 『帝国オーケストラ』@ユーロスペー…

Sさんへ

水影のひいてゆく浜貝をあつめてきみの指先細けれど スコールゆき雲間の光背に受けて海の記憶をあつめておりぬ 水を蹴るきみの足裏まぶしくて少女となりしふたたびの夏 この浜のわんこがいつもついてきて貝殻の音スカートにくるまれ 手のひらをかざせば岬遠…

[映画]9条フェスタ2008

とき: 10月18日(土) AM:10:00〜 ところ: きゅりあん(品川区立総合区民会館)@大井町 映画上映『蟹工船』『みえない雲』ほか *上記公式サイトで『みえない雲』の予告編がご覧いただけます。ぜひ、どうぞ。 #立ち一 地蔵@熊楠邸

『舟越桂 夏の邸宅』@庭園美術館

9月23日で終わってしまいましたが、アール・デコ建築の空間に適度に配置された木彫彫刻とドローイング、静かな時間と空気を纏って、館内に溶け込んでいました。 はまりすぎるくらいに。 着衣の人物像のリアルで端正な美しさ、たたずまい。 彼の木彫は、現代…

この夏

この夏いくどめかの雷鳴窓辺の明かりないままに読む塚本邦雄 葉隠れに羽をふるわす朝際の吾子の出立つかなしみをふと

そっと背中を

手のひらに輝けるもの玉虫の アストライアの遣わせしもの 腹ばいになってごらんよ草原にそっと背中をなでてゆく風 うすらかにほこり被れるデスマスク天衣を纏うそのひとの面 白浜の朝顔咲けり深き蒼海のあおさに融かす夕暮れ 炎天は明るい地獄でありて鳴かね…

紫の花、青い花

9月に入って、夏休み気分もそろそろ抜け出さなければと思うこのごろです。 金沢、白川郷から帰って、8月の終わりに白浜、京都に行きました。 旅について、書きたいと思いながら、何も書くことがないような気がして、今ここにいる、ということのために、それ…

横浜トリエンナーレ2008 9.13〜11.30

『神尾真由子ヴァイオリンリサイタル』@石川県立音楽堂コンサートホール

少し涼しくなって、金沢に行ってきました。 20年ほど前に行った金沢の町の記憶は、仙台の記憶と交錯してしまっていたようです。 いつか金沢21世紀美術館に行きたいと思っていたのですが、18日からのいしかわミュージックアカデミーフェスティバル2008に神…

『女工哀歌』監督:マイケル・ペレド@渋谷:シアター・イメージフォーラム

過酷な労働条件、平均年齢15歳、一日の労働時間18時間、時給7円以下。 私たちが毎日つくるジーンズ。 だれがはいているんだろう? アムステルダム国際ドキュメンタリー映画際アムネスティ・ヒューマンライツ・アワード受賞 #『 灯リ分ノ明カリノ在リカ。…

『アメリカばんざい』監督:藤本幸久

(タイトルをクリックすると、映画の公式サイトにアクセスします。以下、映画の内容に触れています。未見の方はお気をつけください) アメリカのホームレスの3分の1は、米軍からの帰還兵だといいます。 社会保障の行き届かないアメリカにあって、 貧しい若…

[映画]『敵こそわが友〜戦犯クラウス・バルビーの3つの人生』監督:ケヴィン・マクドナルド@テアトル銀座

(内容に触れています。未見の方はお気をつけください) アメリカに関するドキュメンタリーを二作観ました。 その一本が本作です。 多くの証言に基づいた、フィルムに弛緩したところのない、とてもよくできたドキュメンタリーです。 《あらまし》 クラウス・…

店長さん

毎日暑いですね。 最近、普段はあまり行かない駅の近くのファミリーレストラン行くことがあります。 時間によっては、待つ人もいて、奥の厨房に長く、禁煙、喫煙席100席ほどはいつもかなり埋まっています。 食事の料金は決して安くはないのですが、この炎天…

『ミトン』『チェブラーシカ』監督:ロマン・カチャーノフ@渋谷:シネマアンジェリカ

『崖の上のポニョ』はまだ観ていませんが、ジブリ美術館でも公開中の五十年ほど前のロシアの国民的アニメ,ロマン・カチャーノフ監督のパペットアニメ二作を観ました。どちらもかわいくて、そのけなげさに打たれます。 ミトンのポストカードやチェブラーシカ…

夏うさぎ群れて駆けゆくさみどりの滑走路につづく草原の波 日没のあわい静かに融かしつつ古き鉄棒夏草に埋もれつ 驟雨去り廃園に風立ちぬ濡れ縁に落ちるハナモモの音 夏帽の飛ばされてゆく幹線道路母の意識は朦朧とせり #ゼリーの風 PHOT BY MS.BEE

『オスカール大岩:夢みる世界展』@東京現代美術館

(タイトルにアクセスすると公式サイトにアクセスします) 展覧会のチラシの絵を実際にみたくて、行きましたが、予想を上回る刺激的なスケールの大きな作品群。 お花畑のようにみえたものは、はるか眼下に遠景として、夜の都会のビル郡、その上空を浮遊する…

『岡鹿之助展』@ブリジストン美術館

(タイトルをクリックすると、公式サイトにアクセスします) 変電所や灯台、城、教会、掘割、パンジーなど、静謐な時間を感じさせる岡鹿之助の絵に心魅かれていました。 その多くが雪の風景で、時間が止まったような、具象でありながらどこか現実離れした絵…