『アメリカばんざい』監督:藤本幸久

azamiko2008-08-14

(タイトルをクリックすると、映画の公式サイトにアクセスします。以下、映画の内容に触れています。未見の方はお気をつけください)



アメリカのホームレスの3分の1は、米軍からの帰還兵だといいます。
社会保障の行き届かないアメリカにあって、
貧しい若者が、奨学金や資格取得を目的に米軍に入隊し、その目的も叶えられず戦地の強いストレスからPTSD(心的傷害)を抱え、仕事につくことはおろか、日常生活さえままならないまま、20代でホームレスになる場合がめずらしくないと言います。
ベトナム帰還兵の若者たちが路上で年をとっていっているという現実は北朝鮮の兵士が退役してホームレスになっているという現実とどう違うのでしょう。
定住しないことや家を持たない生活を否定するつもりはありませんが、望まないひとをホームレスにしてしまう社会がいいはずがありません。


日本国憲法25条:すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。




このドキュメンタリーは、アメリカの国内問題に限定して、米軍について綴られていますが、それは、そのまま平和のためという名目で隊員を募集している海外派兵のできる自衛隊、近未来ではなく、今現在の日本の現実について言えることだと、藤本監督はトークショーで語っておられました。
千歳出身の級友のほとんどが自衛隊員の子弟であった高遠菜穂子さんは、米軍と自衛隊の合同訓練は、戦地を想定した即戦力を養う訓練であり、自衛隊の将来を非常に危惧されておられました。
自衛隊が災害や緊急時に出動する活動であれば、文字通り平和維持部隊なのですが。


新兵勧誘のオフィスに「CLOSED」という紙を貼って、座り込む年配の女性たち。
彼女らを逮捕してゆく警官たちもやりにくそうです。
「私たちの座り込みで、ひとりでも戦地に行かなくてすむのであれば、たとえ逮捕されてもかまいません」と開放後に語っていました。
おばあさんになっても私にもできる!と思いました。


帰還兵士や家族へのインタヴューは、静かに語られながら、魂の叫びであることがよく分かります。
丁寧な取材とインタヴューは、するものとされるものの信頼感に基づいた撮影ゆえだろうと想像できます。
9・11以降、米兵の死者は4000人を超えました。
4000以上の十字架の立つ丘に重なって流れる「For the mothers 」(作詞、作曲、歌 Betsy Rose)
ひとりひとりの命を大切に思うことからしか未来に対する希望は語れないということを強く思います。


参考
マガジン9条〜藤本幸久さんに聞いた《戦争をする国アメリカの真実を見よ》