「絵巻 山中常盤」牛若丸と常盤御前ー母と子の物語

azamiko2005-04-25


岩波ホールで一週間だけ特別上映されている羽田澄子監督のドキュメンタリー映画『絵巻 常盤御前』を観に行った。久しぶりの岩波ホールはやはり、過ぎた年月を感じさせる。クッションがだいぶ痛んできたようで、座布団がくくりつけられてあった。
途中から聞いた上映前の監督羽田澄子さんのお話しは、絵巻物が日本のアニメーションの源流ではないかというもの。う〜む、なるほど。
『伴大納言絵巻』『信貴山縁起絵巻』にしても、物語性といい、描写力といい、すばらしいですものねえ!
『山中常盤』を描いたという奇想の絵師岩佐又兵衛織田信長に叛旗を翻して、一族600名が処刑された伊丹有岡城荒木村重の遺児(当時一歳)で、密かに乳母によって救い出され京の本願寺門徒に匿われて成長したという。
この絵巻物は、寛永年間松平藩に伝えられたもので、浄瑠璃(語りもの)を題材に12巻に及ぶ。2万5千ドルでドイツ人に買い取られようとしているところを、長谷川巳之吉氏が海外流出を防ぐため、家を抵当に資財を売り払って入手したとか。
お話は、常盤御前源義朝の妻、今若、乙若、牛若丸の母)が牛若丸恋しさのあまり、奥州平泉に向け、侍女をともに出立。旅の途上で六人の盗賊に襲われ、惨殺される。平泉でしきりに母の不吉な夢をみる15歳になった牛若丸は京へ向かう途中で、塚をみつけ、宿の主人より母の死を知らされると、ひとりで六人を討ちとり、墓前に報告する。18歳になった義経は再び10万余騎を引きつれ、京に上る途上墓参し、宿屋の主人に礼をする。という史実ではないお話しだが、絵のみごとさ、リアルさ、首が撥ねられ、血しぶきが飛び散っているさまなど表情、動き、風俗といい、生き生きと伝わってくる。添えられた浄瑠璃の詞書の字もうつくしい。
絵巻の映像とともに、鶴澤清二郎によって詞書から新たに作曲された浄瑠璃がお話を追って流れるのも、浄瑠璃を聞くことなど、ほとんどない私にとって、とても新鮮で、三味線の音も心地よかった。
この映画の中で常盤御前に、岩佐又兵衛が21歳で信長によって処刑された母たしを想い、母の仇を撃つ義経にわが身をダブらせ、絵を描いたのではないかというアプローチもとても納得させられる。
2004年度日本映画ペンクラブ賞ノン・シアトリカル部門、第一位
文化庁映画賞優秀賞

次回上映予定は、『ベアテの贈り物』。
日本国憲法に男女平等を盛り込んだベアテ・シロタ・ゴードンという日本で育ったアメリカ女性のドキュメンタリー。監督は藤原智子さん。
憲法草案に男女平等を盛り込むことは大変なことだったようです(笑)