『かもめ来るころー松下竜一と洋子』トムプロジェクト@ベニサン・ピット
演劇を観る機会はあまりありませんが、知人から誘われてこの公演を最後に閉店するというベニサン・ピットに行ってきました。
大相撲の国技館のある両国から約10分。
染物工場だった名残を感じさせる間口の広い入り口、高い天井、ホールと複数のスタジオのあるベニサン・ピットのホールはステージを見下ろす客席が、舞台の袖ぎりぎりまで並んで、舞台と客席との密接な空気を生むようです。
《あらすじ》
母の死により、進学をあきらめ、弟妹の面倒をみるべく、家業の豆腐屋を継いだ竜一は、病弱で、友人もなく、厳しい生活から日々をつづる短歌を新聞に投稿しはじめ、のちにTVドラマ化される『豆腐屋の四季』を書いたことから、講演を頼まれるようになり・・・。
原作である『豆腐屋の四季』を高橋長英と斉藤とも子のふたり芝居で演じられる松下竜一は、意外でした。
アナキストや反日武装戦線を題材とした小説から伝説的に語られる松下竜一は著書を読んでいなかったのでよく知らなかったのです。
「反骨の人」という印象は、ひたむきで実直な病弱な青年時そのままに書くことと生きることに向き合った人生だったのだと思います。
家族六人年収200万円、生活保護も受給できる貧しさだった、といいます。
「環境権」を守る粘り強い住民運動を続けながら、力に抵抗する人々を描き、草の根通信を発行。
第4回講談社ノンフィクション賞を受賞した『ルイズ 父に貰いし名は』は 、大杉栄、伊藤野枝の四女伊藤ルイさんを描いた松下竜一のよく知られたノンフィクションですが、それをきっかけに、草の根の活動をはじめた死を目前にした伊藤ルイさんをドキュメントした『ルイズその旅立ち』(監督:藤原智子)は私の最も記憶に残るドキュメンタリー映画のひとつです。