『日本の悲劇』監督:木下恵介

azamiko2007-11-22



(映画の内容にふれています)
私の知っている木下恵介作品といえば、代表作といわれる『二十四の瞳』やTVでの緻密な心理描写で描かれるヒューマニスティックなホームドラマだったのだが、ホームドラマとは、程遠い。


戦後、戦争で夫を亡くした女が二人の子どもを育てるために、闇屋や仲居などをして必死に働く。
しかし、働いて家に母のいない姉弟は、それぞれ世間の冷たい風に曝され辛酸をなめている。
母にとって唯一の子どもたちは、母を疎ましく思いながら、母から離れてゆく。


木下恵介の初期作品に対する再評価を語る白井佳夫の講演を聞いたことがある。
その時にはよく分からなかった再評価の意味が、この映画を観て、よく分かった。
内から沸き起こってくる懊悩や葛藤は単なる心理描写にとどまらない。
この映画にとってニュースの挿入はただ、時代背景や社会との関連をあらわすというだけではないようだ。
群れの中に生きる人間の業、そのものを象徴しているように思える。


講演会で部分的に上映された初期作品『女の園』、『女』、『陸軍』は、それぞれ女学生、ダンサー、母というように主人公が女性であり、女の拮抗する姿を捉えていた。
戦時中に国策映画として撮影されて『陸軍』は、出征する息子を追い続ける母の姿の長いラストで、反戦映画である。
いずれ、これらの映画も全編通してみたいものです。



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ベートーヴェンマーラー