『ディア・ピョンヤン』監督:梁英姫


戦前15歳で韓国済州島から来日、戦後、朝鮮半島が分断され、北朝鮮籍を選び、朝鮮総連の中心メンバーとして活動してきた父を中心に、帰国事業で北朝鮮に渡った3人の兄、家族をめぐる梁英姫によるドキュメンタリー。


今現在、北朝鮮に家族をもつひとのギリギリ精一杯のドキュメンタリーだろうと思う。
北を信じ、家族・縁者のために荷物やお金を送り続ける父、母。
北朝鮮で古希を迎えるために兄たちの住むピョンヤンをおとづれた一家の映像はピョンヤン市内やアパート、ホテル、宴会場と貴重な映像が収められている。
カメラの前の、底抜けに明るく、家族を愛する父(アボジ)はキム・イルスン信奉者であり、ジョンイルを将軍様と呼び、朝鮮総連幹部として、当時18、16、14歳、3人の兄を北朝鮮に送ったことを後悔していない(ようにみえる)。
カメラの前の顔とは違った顔があるようには見えなかった。
家族がいるからこそ信じ続けることのできる、信じなければならない現実なのだろうか。
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北朝鮮への思いは微妙に違う、北朝鮮に行ったまま行方不明の娘をもつ『HARUKO』という映画を思い出した。
ピョンヤンに住むことができるのは総連幹部としての忠誠心や金銭・物品を送りつづけていることの見返りだとしたら、特権階級として体制を維持することに協力してきたことにもなるだろう。
こんな感想をもつのは、日本のマスコミに乗せられ、安全な場から批判していることにしかならないのかもしれないとも思う。
朝鮮半島分断に関する重大な責任は日本にあり、何も果たされていないことを、あらためて思った。


ふたつのドキュメンタリーから組織の問題を思った。
組織の論理はつねに個人を支配しようとし、わが身を託していれば、組織を疑うことはない。
よって立っているわが身は倒壊してしまうからだ。
信じようとする気持が疑う気持ちを排除してしまう。
そして、いつしか取り返しのつかないことになっている。
軍隊組織にかぎらず、どんな組織にもありえることだろう。自戒をこめて。




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