『美術館の遠足』@西宮市大谷記念美術館

azamiko2006-06-02


毎年一日だけ、『美術館の遠足』というイヴェントがあり、今年は10回目、最終回ということで、出かけて行きました。
最後はあっと驚かせます。と主催者のサウンドアーティスト藤本由紀夫さんは9回目の去年語っていたそうですが、やっぱり、驚きました。
いたって、シンプル(笑)
来館者は入り口にかけてある手帳大の発信機を首から下げて、館内を歩きます。
所々に発信機が設けられていて、場所によって、音が大きくなったり、設えられた発信機に反応して和音を奏でたり。
例年、藤本さんの作品が並べられているのが常なのですが、今回はほとんどありません。美術館のショーケースの中にも何もなくて、鍵がかかっておらず、「どうぞ、あなたが展示物になってください」という次第。
いつもは展示品を眺めるガラスを隔てて、展示ケースの中から美術館の中を見渡しました。ポーズをとる人。長いケースの中を歩く人。子どもたちの集団。立ち止まると展示物になってしまうから不思議です。
中からも外からも写真におさめるひと。
準備室、講座室、地下室、作品収納室等、自由に歩きます。
30日の日記の写真、西洋人形もアトリエに数体あったものを撮ったもの。
草花の種類はびっくりするほど豊富でよく手入れされていて、庭園を歩くのもとても楽しい。
美術収集家であった大谷竹次郎氏の邸宅であった建物、和室、土蔵、池、庭のオブジェや水琴窟などもゆっくり愉しみました。
美術館の中をこんなに自由に、気ままに過ごしたことはありません。
「ない」というのは、記憶を呼び覚ますものがあります。
一昨年、8回目の『美術館の遠足』ではサイレント映画が大きな手回しオルゴールの演奏つきで上映され、月夜の池に映像が映り、サイレント映画の中の月が現実の夜空に写ったかのような錯覚を起してしまいそうでした。
木の葉でいっぱいになった一室でむせ返るほどの香りに包まれて座っていたこともあります。
両側に大きな筒状のパイプが設えられた中央に座ると、パイプを通って不思議な音が聞こえます。貝殻を耳にあてるように。
何の細工があるでなし、とても心地よく、それが海を見下ろす山の上ならどんなに素晴らしいかしらむ。
と思わせてくれる実演葉書をまじまじ見てしまいました。
何もない会場で一番忙しかったのは藤本さん、カタログにサインを求める人、最後に話をしたい人、9時を過ぎても引きもきらず、長い行列。
これもちょっと、ありえないこと。
藤本由紀夫が一番の展示物。


もともとは美術館を知ってもらおうとはじまったイヴェント。
美術館そのものにスポットをあて、そこに集うひとたちの親和力を高めたかったのだろうと思います。
藤本由紀夫の代表的な作品、HERE&THERE ECHO