『ジェリー』監督:ガス・ヴァン・サント〜命のゆらめき

(ネタばれあり)
コロンバイン高校に材をとったカンヌ映画祭パルムドール、監督賞W受賞作『エレファント』でその名前を忘れられないものにしたガス・ヴァン・サント監督作ということで、吉祥寺バウスシアター爆音レイトショーに行って来ました。通常の映画音響ではなくライヴ音響システムを使っての上映。爆音レイトショーはすでにニールヤングの『グリーン・デイル』(12月31日のブログ参照)で経験済みですが、今回の音楽はアルヴォ・ペルト。轟音、爆音とは、ちょっと結びつかない静謐な音楽のはずですが・・・。はたして、どんな感じなのだろうかと行ったわけです(笑)グリーンデイル [DVD]
ペルトの叩く一音一音が鮮明に響き、効果音が地鳴りのように不穏に轟きます。
内容的にはある種実験的な映画とも言えるでしょう。
ハイウェイを車を走らす二人の青年。二人の名前はわかりません。ふたりは車を降り、歩き始めます。どこに向かっているのか不明。家族連れとすれ違います。家族連れでも歩ける道を行くのがいやだったのか、二人はちょっとルートをはずれます。おしゃべりしたり、ふざけたり、潅木地帯を歩いているうちに、道に迷ったのではないかと思いますが、それでも歩いていきます。ここで待っていてもどうしようもありません。いずれ出られるはずだと歩き続けます。しかし、完全に道を見失っていることを認めざるおえない。とっぷりと日が暮れて、野宿することにします。翌朝も歩きます。別行動をとって丘に上り、道を探そうとしますが見つかりません。次の日も次の日も。3日3晩飲まず、食わずで歩き続けるふたり。幻覚を見、幻聴を聞き、出口の分からない荒涼とした地を抜け出すためひたすら歩きます。
『ジェリー』とはふたりの造語。「しくじる」というような意味ですが、ふたり(マット・ディモンとケイシーアフレック)のジェリーのうちのひとり(ケイシー・アフレック)のトレーナーにはダビデの星のような大きな黄色い☆印が前面プリントされています。ジェリーはジェリーを見捨てたのか?

最も印象的な映像、風船のようにゆらゆら上がる朝陽。朝陽が昇るとともに闇夜に氷上をゆるゆると歩いているかのようだった二人が乾いた砂上を歩いていることがわかります。疲労感と茫漠感にもかかわらず、この映像がすばらしかった。