夢見るように歌えば〜父と子「家庭」からの逃避。

25日(金)は久しぶりの銀座に出ました。夜8時からのベリーダンスとギターのライヴに行くためですが、その前にシネスイッチで『ビヨンド・THE・シー』を観た。
1950年代後半から60年代にかけて、アメリカで活躍したエンターテナー、ボビーダーリンの伝記映画、ケヴィンスペイシーが監督:主演、構想から10年かかっているという。音楽映画は映画としてたとえ凡作であっても、それなりに楽しめるので、けっこう観るけれど、凡作とはいわないまでもケヴィンスペイシー自身がボビーダーリンになりきって歌っているところが物足りなかった。と言ったら、欲張りすぎか。実際のボビーダーリンを知っているわけではなく、どこかで聞いた記憶がかすかにあるだけなのですが。でも、たぶん、何かが違う。4〜5年に及ぶヴォイストレーニング、レコードを聴き、録音を繰り返すという並々ならないケヴィン・スペイシーの努力だったらしいが。
スウィンギン・ザ・スタンダーズ
天才的エンターテナーといわれたボビーダーリンの歌にはもっと艶があり、そのステージパフォーマンスには花があったはずだ。そうでなければ、ショービジネスの世界で、第一線にい続けることはむずかしいはず。まねにはなっているのだろうが、なぜか伝わってくるものが少ない。ケヴィンスペーシーはどちらかというと渋い、地味な俳優で、エンターテナーの花を演ずるには少し無理があったということでは。
子ども時代を演じた11歳のウィリアムウルリッチは歌もダンスも上手く、*1父親のいない、病弱な孤独な音楽だけが生きがいだった少年時代を好演している。自己言及的に晩年の彼との対話、告発になっているところが物語に厚みを持たせてはいるのだが、時代背景や外の世界の描き方が充分でないため体験したであろう孤独や差別が充分に伝わってこない。一緒に歌を歌い、踊るところはいちばんの見せば。女優で、妻役のサンドラ(ケイトボスワース)も可憐。なおかつ父と子(トッド)の物語にもなっているが、晩年彼が家族を愛しながら、「家庭」から逃避していたことをうかがわせるところが印象的だった。


この後銀座のギャラリーBAR KAJIMAへ
上田葉子さんと下館直樹さんのベリーダンス&ギター。
ベリーダンスに抱くハーレムで踊られる妖艶なダンスというイメージとは違う上田さんが以前語っておられた本来の「月に祈りを捧げるダンス」を是非観たいと思っていた。 
肌の露出のない緋色の衣装、ベール、金色の薄いコインのようなアクセサリーがたくさんさがった腰の装具が細かい腰の動きで次第に音を高めてゆく。音によって、静寂が表現される。祈りという情感が込められたこころを静めてくれるような波動が伝わってくるエキゾチックなダンスだった。
下館さんのキャラクターにはいつも好感。激しいフラメンコを!

*1:すでに、ブロードウェイで4年のキャリア