藤原真理の熱演

そういえば、これもずいぶん前ですが、チャイコフスキーコンクールで受賞まもない藤原真理さんによるベートヴェンチェロソナタ東京文化会館、最前列真正面で聴いたことがあります。こちらは毎日、毎日、ロストロポーヴィッチリヒテルの名演奏を聴いていましたから、この曲に対しては、ちょっとうるさい(笑)。曲に対してのイメージが出来上がっているのもありますから。
しかし、彼女の熱演は充分に満足させてくれるものでした。残念ながら、このときのピアノが誰だったのかすっかり忘れていますが、弦の音もさることながら、真正面で演奏する藤原真理さんの表情やら息遣いやら、汗やら、衣装の擦れる音やら、緊張感がびんびん伝わってきます。それは、ほんとうにこの曲と格闘している演奏者の生の姿でした。
藤原さんはロスポロポーヴィッチに師事し、演奏も近いものがあったと思います。それでも、出来上がったイメージで聴いている者にとって不満をいえばきりがありません。しかし、それを凌駕するくらいの迫力がまじかで演奏する藤原さんから感じとれました。
コンサートを聞く場合に玄人は音に関して、どこに座ればいいかなど、いろいろ持論があるとおもいますが、私はできればなるべく前で、演奏者をまじかに感じながら聴くのが好きです。