まさか、まさか大西巨人さん?

ところで、映画が終わって、立ち上がると、右よりの少し後ろに大西巨人氏が隣の赤人氏(?)と話をされているのを発見。映画がお好きだとはいえ、今年86歳になられる大西さんが埼玉から新宿まで映画を観にいらしたということがちょっと、信じられなくて、もう一度確かめようと外のソファで待っていた。大西さんは杖をついていらしたが、姿勢がとてもよくて、ゆっくり手すりにつかまりながら階段を上られていた。美しい銀髪に端正な白い顔、とても美しいご老人だった。つぎつぎ新作を発表されているのだから不思議でもなんでもないかもしれない。東京に住んでいると、著名人といわれる人に会うことは珍しくない。同じ町内に住んでいるということもままある。松本清張と渋谷でぶつかったり、高橋悠治が映画館の隣の席にいたなんていうことも珍しくない。しかし、大西さんに偶然会えた幸福は不思議に思えてしかたがなかった。何か引き換えに起こるのではないかと思えるくらいに。

精神の氷点

精神の氷点

去年読んだ光文社版『神聖喜劇』は圧倒的な印象を私に与えた。そのあとに読んだ人間の暗部を描き出した『精神の氷点』も非常に印象深い作品だった。書くということの緻密さ、その徹底さに驚かされる。いずれ、もういちど、ゆっくり味わいながら読み返したい。購入したままで未読の『深淵』が頭をかすめた。
深淵 〈下〉

深淵 〈下〉

はたして、大西さんは『トニー滝谷』をどのように観られたのだろうか?