『夕凪の街 桜の国』

azamiko2005-01-29

先日、駅ビルK書店に行ったら、出版社切れになっていた『夕凪の街 桜の国』(こうの史代双葉社)が入荷していて、さっそく購入しました。
全国に販売網をもつこの大手書店。売り場面積も数年前に拡張して利用者も多いのだが、店頭に置かれる本の品揃えがあまりよくない。新刊が入荷しても書店員の判断で店頭に並べないまま出版社に返送してしまう。置いても売れないだろうという判断なのだろう。売り場面積が限られているからというのが理由なのだが。また、検索してあるはずの本がないことも多い。データーは昨日までの在庫状況だからというのだが、こうしばしばでは、それも疑わしい。と、いつも不満を言っているせいなのかどうなのか顧客のブラックリストにでも載っているのかしらと思うくらい、店員に何か用件を頼もうとすると一瞬緊張の色が走る。というのは、私の思いすごしか(笑)。
だから、大きいわりにあまり当てにならない本屋なのです。

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

話がそれましたが、思いがけなく入手した『夕凪の街 桜の国』(800円)は100ページ足らずで一冊の漫画としては薄いが、内容はとても厚い(熱い)ものだった。帯には「文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞」
広島で爆撃を受けた一家の物語といえば、読むのをためらう人もいるかもしれない。
私もためらわないわけではなかった。作者自身広島に住みながら、『ヒロシマ』を避けてきたという。
避けてきたものに目を向けなければと促されるように読むことにしたのは、見過ごしていることのできない状況が今の日本にあるからです。
とはいえ、この本が悲惨な体験を描きながら、暗く、重く、やりきれな気持ちにさせるだけものではないのは、読んでいただければ分かるはずです。
原爆の惨状は作者が描かなければならないと思った必要不可欠のものとして書かれている。何よりも書かなければいけないと作者が思ったものは、死んでいった人たちの存在の記憶なのだと思う。たしかに存在した人の生きるはずだった生を忘れないために。消し去ったもののあることを。
読み返すと、最初に読んだときには気づかなかった面白さ、可笑しいが息づいています。 姉と弟、男と女、関係性がとてもよく描かれている。とくに女性が魅力的です。また、女と女の微妙な関係もこの作者独特なものなのだろうと思う。それぞれのキャラクターが立ち上がって、人と人との微妙な関係を描くことのできる作家なのだと思います。
『夕凪の街』の皆実も『桜の国』の七波も東子も京子も、打越さんも凪生ももう忘れられない人たちです。この本を読んだ人はきっとその記憶をもち続けるだろうとおもいます。