詩のボクシング

ところで、話は変わりますが、TVって観ますか?NETの報道ステーションとニュース23は比較的観ていますが、他はあんまり観ません。ネットやっていることが多いからですね(笑)。それで、どんな番組が面白いのかさっぱり分からないのですが、先日、番組欄をみていたら、第4回『詩のボクシング』(再放送)があるというので、ビデオ録画して観ました。面白いんですよ。これがなかなか。友人に録画してもらったこともあります。
簡単に説明すると、全国大会を勝ち抜いたボクサーたち(詩人)がボクシングのリング上で詩を朗読、ジャッジの多数決で勝者を決め、勝ち抜いてゆくというトーナメント制で最終戦は自作の詩と即興詩での対決。チャンピオンが決まる。
前回のチャンピオンはファミコン君(名前は失念。HPにも過去の記録がなくて)でした。ファミコンとはファミリーコンピュータのことではなくファミリーコンプレックスのことで、家族への愛(母、妹、父)を確信的にとつとつと詩に詠み込んだ青年の私的世界が他を圧倒したのでしたが、今年の優勝者は山口県の林木林(はやしきりん)さん。
http://www.asahi-net.or.jp/~DM1K-KSNK/national4.htm
それで、すっかり彼女のファンになってしまったのです。
『ちびまるこちゃん』に出てくる野口さんキャラ(笑)。子どもには不気味な存在だけれど、ぼそっと言うことが核心をついている。素顔はシャイで、ナイーヴな方なのだと思う。
「生い茂る雑草が緑いっぱいの町づくりを推進しています」
ふるさと山口の詩の一節。
目で読むのではなく、聞く詩であるということも『詩のボクシング』の面白さで、朗読する声の抑揚なども印象として大きいのですが、林木林さんの読み方は、無表情にたんたんと抑揚なしに読み上げることで、むしろイメージを喚起させる。たしかに作者が詩を読んでそれを聞いてはいるのだけれど、目で読んでいるのに近いような感じかな。
お風呂を沸かすのが得意だった死んだおじいちゃんのことを詩にしたものもとても可笑しかった。温かさのある諧謔性
最後に読んだ自作、水と木の字がよく似ていて、まちがえてしまうということから、二つの言葉からイメージが混同して沸き起こって世界が塗り替えられてゆくさまを詠んだ詩は出色でした。アニメーションの映像が立ち上がり、劇場で見ているような。
影を踏まれたくなくて、映画館でも一番後ろの隅っこに座ると即興詩にあったようにはぐれものの視線。人が見ないようにしているものをみてしまう人なのでしょう。そして、見てしまうだけでなく、そこからどこまでもイメージが広がってゆくような可能性を感じさせる跳躍のある詩です。
若者のアイドルはもう無理なので高齢者のアイドルをめざしているそうですが、これからの活躍、楽しみにしてまっせ!!