『コマンダンテ』監督:オリバーストーン(スペイン、アメリカ合作2003年)@渋谷ユーロ・スペース

azamiko2007-06-09

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スペインのTV番組でカストロへのインタヴュアーとしてオリバーストーンを起用したことから、映画化になったという作品。
カストロの人間的魅力とオリバーストーンの歯に衣着せぬ質問とで興味深い作品になっています。
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字幕がみにくく、語られることが多かったので、読み落としてしまい、もういちど観る予定。


カーキ色の軍服に身を包んだ80歳をすぎたカストロは矍鑠としているとはいえ、決して元気そうには見えない。
表情には苦悩の色さえ感じられる。
それが肉体的なものからなのか、精神的なものなのかは分からないが、彼の肩にのしかかっているものの大きさを感じさせる。
彼が依然、キューバコマンダンテ(司令官)であることに変わりはない。
町に出ると、たちまち人垣ができ、彼を取り巻く人々の表情は輝き、敬愛に満ちている。
撮影のためのやらせなどでは到底できない熱気である。
かつて、10時間を超える演説もめずらしくなかったという熱情的なカストロの演説の姿を捉えた映像とのギャップは仕方ないとしても彼の政治的理念がイデオロギーではなく、人間愛にあることだけは確かだろう。


楽天的な合理主義者で実利主義者であり、数々の困難を乗り切ってきた。
それでも、キューバ危機のときにはアメリカの攻撃による国の滅亡をも覚悟したという。
アメリカの経済封鎖、ソ連への接近、フルシチョフとの関係やケネディーの評価、ゲバラとのこと、私的なことなど、彼が語るすべては直接的人間的な関わりとしてのものである。
印象的だったのは、ソ連邦の崩壊を招いたゴルバチョフの時代にソ連の経済援助が打ち切られ、キューバ経済が最大の危機に瀕したにもかかわらず、「ゴルバチョフはいい仕事をした」と評価していることなど。


「私は私自身の独裁者であり、国民の奴隷」
「私は(執務室に)囚われの身」
と語る言葉はキューバに生涯を捧げてきた労苦を深くにじませながら、人生の終末にさしかかったカストロの達観ともいえるだろうか。
こころに沁みる言葉だった。★★★★





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