わたしのまち


真昼の郊外の丘に続く瀟洒な街。
敷き詰められた舗道、大人の背ほどの立ち木が等間隔に植えられている。
歩道も車道も山を切り崩して電車の開通とともに、開発された新興の地にふさわしくゆったりとして。
行き交う車もなく、なだらかな人工の丘陵に沿って、シンメトリーの風景をつくっている。
空には雲も流れていない。
空気が流れることもなく、風が吹くこともなく、
真昼の太陽がハレーションを起したように街を白く照らしていた。
この街、この風景、
今しがた降りた郊外電車は閑散として、駅ごとに人びとは降り立ち、鈍い音を引きずって、いつものように緩慢にあといくつかで着くはずの終点に向かいます。


ここは、私の住む町ですがおもちゃの町です。
改札でキップを渡した駅員も駅舎から出ていったまばらな乗客たちも、機械仕掛けの人形です。
私の住む街ですが、見知らぬ街です。


貴方には分かっていたのか、分からなかったのか、
あのとき何を書こうとしていたのか、
書くべきものがないということを書きたかったのです。おそらく。


晩春から初夏にかけての風景を。
小さな駅舎の改札を出るときに感ずるあの感覚を。
覆いつくし、それだけでいっぱいになる。
それを言葉にしておきたいと思ったのです。
侵食されながら、侵食されるまえに、