『嵐電』うらたじゅん:著

azamiko2006-10-08



第一作品集『真夏の夜の二十面相』がとてもよかったので、MLで刊行を知り、即ネットで購入。ネットで夢幻堂に注文すると 、丁寧なサインと葉書サイズのミニ原画がついてきました。
上記タイトルの『嵐電』をクリック!


嵐電というのは幼いころ映画ファンのお母さんがうらたさんを連れて京都太秦の撮影所に通うために乗った路面電車のことですが、うらたさんのマンガの虚構と現実とが絡みあった物語の成立には、映画の撮影所で体験した幼児体験があり、嵐電に乗るということがそのまま虚構と現実の世界への出入り口であったのではないだろうか。
タイトルにはそういう意図があるように思う。


どの作品も痛みを伴った独特な抒情がリアリスティックに、ときにミステリアスに、ときに笑いを纏って描かれています。ふぇみ力を感じさせる掌編。


辻潤、小島キヨについては作者のみた実話だろうか。
そんなはずはないですね(^-^;
苦学生の戦争体験を描いた「鈴懸けの途」はうらたさんが自身の掲示板で力不足だったといわれているように、戦争責任や加害者意識に不満はあるけれど、戦争によって青春を生きられなかった青年であった父をおもう娘の気持ちに共感した。
認知症を描いた『五月の風の下』、『発禁桜御前』『眠れる海の城』は柔らかい描線からはおもいもよらない悲しい物語です。
惜しむらくは第一作品集を越えているとは思えないということです。