『水没の前に』監督:リ・イーファン、イェン・ユイ

azamiko2006-09-19



初日の9月16日(土)17:20からの『水没の前に』は満席、階段に座布団席まで設ける盛況でした。
2005年山形ドキュメンタリーフェスティバル大賞のこの作品は、2009年完成予定の世界最大級三峡ダム建設により水面下に沈む街のひとつ、李白が詠んだという四川省奉節の水没前の人びとの暮らし、町の様子、移転先のない人々の不満や不安、役人とのやりとり、そして立ち退きのすんだビルからはじまった解体作業などの質感が、混然と活写されている。


牧師に不満を持つ職員とおくれてやってきた牧師との会議の様子や解体作業をめぐって、請け負った前牧師の息子とのやりとりなど生臭い話は、ドラマそのもの。
カメラの存在ゆえか、中国人の国民性ゆえなのか、自分の思いを語るシーンも時にドラマティック。
カメラは行き場のない人の不満や不安を通して、行政のやり方の強引さや、杜撰さ、中央集権的な問題を映し出している。


崩壊したあと、鉄骨や鋼など換金できるものを集める人々の広大な街に鳴り響く、槌音と甕を提げて売り歩く酒売りの声とがいつまでも耳に残った。