[本]『日本という国』小熊英二著、理論社

日本という国 (よりみちパン!セ)

今年の8月は、例年になく戦争についての思いにかられます。
世界に広がる暗雲、米軍再編が頭を離れないからだと思います。

61年前の敗戦の数日前、人々の気持ちはどんなだったのだろうか。
戦争が終わるなんて、思わないまま必死で生きていたのではないか、ようやく生きていたのかもしれない、と思うと、今は、ただ執行猶予を受けているだけのような気がしてきます。
戦前と今とは繋がっているように感じてしまうのです。


以前、さるとらさんのブログで紹介されていた『日本という国』(小熊英二理論社)という若年者向けに書かれた日本の歴史を概説した本を読みました。
簡単に読めて、福沢諭吉にはじまり、現代の状況まで漠然としていたことが輪郭をもって感じられます。
天皇(制)について等、物足りないと思うところもありましたが、『民主と愛国』(新曜社)を読んでほしいとのこと。
最後に引用されていた1951年のサンフランシスコ講和会議を前に丸山真男の『病床からの感想』をここでも引用しておきます。

思えば、明治維新によって、日本が東洋諸国のなかでひとりヨーロッパ帝国主義による植民地乃至半植民地化の悲運を免れて、アジア最初の近代国家として颯爽と登場したとき、日本はアジア全民族のホープとして仰がれた。
・・・・・・ところが、その後まもなく、日本はむしろヨーロッパ帝国主義の尻馬に乗り、やがて『列強』と肩をならべ、ついにはそれを排除してアジア大陸への巨歩を進めていったのである。
しかも、その際、日本帝国の前に最も強力に立ちはだかり、その企図を挫折させた根本の力は、皮肉にも最初日本の勃興に鼓舞されて興った中国民族運動のエネルギーであった。
つまり、日本の悲劇の因は、アジアのホープから、アジアの裏切り者への急速な変貌のうちに胚胎していたのである。敗戦によって、明治初年の振り出しに逆戻りした日本は、アジアの裏切り者としてデビューしようとするのであるか。
私はそうした方向への結末を予想するに忍びない。

#不忍池


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