『ベトナムから遠くはなれて』総編集:クリス・マルケル 監督:アラン・レネ、 ウィリアム・クライン 、 ヨリス・イヴェンス 、アニエス・ヴァルダ、 クロード・ルルーシュ、ジャン・リュック・ゴダール。

1967年、ベトナム戦争をこのまま見過ごすわけにはいかないとフランスの第一線の監督たちによるコラボレーション。


映画は港のシーンから始まります。
軍艦からクレーンで積み下ろされる巨大な砲弾は海の上でぶらんぶらんと揺られて、トンキン湾に下ろされる。むき出しのまま並べられた大量の砲弾の一本、一本は人ひとりくらいの大きさだろうか。クレパスのように並べられ積まれている。
そのシーンから一転、わずかに風のそよぐ日盛りの広い田畑。
静かな田畑から、突然、銃を手に草を纏って立ち上がり、前進する民兵たち。
次は、ハノイの市街で土管を埋め込む作業をする若い女たち。シャベルやつるはしでひと一人が入れるふたつき土管を通りの道に沿って埋めこむ。これは防空壕だった。
空襲警報が鳴り、退避する市民たち。土管の淵に座って、のんびり新聞を読んでいる老人も。空襲に慣れっこになっている様子が伺える。徐々に接近してくる空襲にしがみつく猫を抱きしめて、不安そうに防空壕から空を見上げる少女。
そのあと、突如、画面は暗転したまま、爆撃の音だけが響く。かなり長く黒い画面が続く。爆撃された建物、砂煙の上がる中から聞こえる救出の声、運び出される人々、死傷した人。
こうして、敵対するアメリカとベトナムの映像が交互に映し出される。
この第1章だけでもこの映画を観る価値はある。

フランス人作家クロード・リデールは書斎で、ひと言も発しない若い女を前に傍観者でしかない自分についての苛立ちを語る。
ベトナムから遠くはなれて一体、何が出来るのか。
それはそのまま多くの人の思いであるはずだ。
ホー・チミン、カストロ、カーマイケルの演説、インタヴューは力強く、確信に満ちている。
史上最大といわれたベトナム戦争反対デモ@ニューヨーク
全身を白く塗り赤い血を流した死体をイメージして行進して歩く、演劇集団の一団は「ピース、ピース」と悲しげに叫び、その芝居がかった演技に思わず笑ってしまったけれど、このおかしさの底からこみ上げてくる悲しさにどうしようもなく涙が溢れてきてしかたなかった。★★★★★


ベトナム戦争終結したのは1975年である。
走り始めた車輪を止めるのは容易ではない。




殿ヶ谷戸庭園

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シネマアートン下北沢

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寺山修司

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月蝕歌劇団
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皓星社通信『寺山修司 遊戯の人』(杉山正樹著)について
http://www.libro-koseisha.co.jp/mm/010115.html


花岡に言及している日記『職業不良家』
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花岡事件について
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天狗滝と綾滝
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