レオノール・フィニ展@Bunkamuraザ・ミュージアム

こちらは『雑巾ダイアリー』のyukari57さんが書かれているのとリンクします。レオノール・フィニの絵を見たのははじめてです。電車の広告に展覧会のポスターの『守護者スフィンクス』を見たとき、強く惹かれるものがありました。どこかでよく似た絵を目にした記憶があります。思い出したのは、坂本淳一の『アディーヴ』という絵。知名度のある画家ではないので、一般的にはほとんど知られていないと思いますが。

しかし、似ているのはその絵の独特な暗い雰囲気と半獣身の女性であるということであって、獣の身体を持った仮面を頭に載せた傷ついたか細面の少女ともか弱い女性とも思える『アディーヴ』と台座にスフィンクスの身体を雄雄しいほどに横たえた半獣の女性像の表情はまるで違います。
傷ついた女性の半獣身像『アディーヴ』が女性の悲しみを描いている男性の作品であり、『守護者スフィンクス』が神のような女性の存在感を表している女性の作品であるというのも、皮肉に思えます。

フィニの作品で魅かれるのは強い存在感を示す自画像と、『守護者スフィンクス』のような自身をモデルにしていると思えるシュルレアリズムにカテゴライズされる作品群です。フィニ自身はシュルレアリストたちの中にあって、同化せず、シュルレアリストといわれることを嫌ったようですが、彼女の作品で最も魅力的なのは、それらの作品であり、私には、それ以外の作品は面白いとは思えませんでした。
舞台美術や衣装を手がけ、自ら装って、孤島でプライベートなフィルムも撮影していますが、それら黒い天使、白梟、魚の皮や骨でできた仮面や衣装などもシュルレアリズムの作品といえます。自身を異形の身とし、人でありながら異形な身体を獲得することを欲望し、異形そのものを作品化するときに彼女はひときわ輝いていたのではなかったかと思えます。



アテネフランセ