『HARUKO』

この映画の公開は2003年。当時評判になった作品ですが、今回ポレポレ東中野ではじめて観ました。在日一世金本春子さんと家族を息子の視点から描いたドキュメンタリーです。ギャラクシー賞を受賞したフジTVの『ザ・ノンフィクション「引き裂かれた在日家族」』の劇場公開版。
12歳で縫製工場の女工として来日。17歳で結婚。3男4女。ヤミ商売で37回逮捕され、それでもなりふり構わず、必死に家族を背負って生きてきた母と家族を捨てた父、家出した次女、地上の楽園を求めて北朝鮮に渡った三女のことなど。元朝鮮総連のカメラマンだった長男性鶴さんの映像も含め、現在87歳の生活力あふれる春子さんの姿に感動しました。
息子と母とはいろんな対立や齟齬があります。北朝鮮に渡った三女を思う気持ちはともに同じでも、北朝鮮へ金銭、物資などを送り、書状や勲章北朝鮮から贈られてきたものを見せる母を冷ややかに見続けてきた息子。そんな息子を思想がないと批判してきた母。今では韓国籍に変え、北朝鮮への失望を認めないわけにいかなくなった春子さん。孤独に死んでいった家族を捨てた父(夫)への思い。海女だった地を訪れ、親子で泳ぐシーン。エピローグは性鶴さんの娘の結婚式。チマチョゴリで踊る春子さん。元気なおばあちゃんです。
ナレーターは原田芳雄。とてもいいナレーションです。性鶴さんの言葉を語っているわけですが、性鶴さん自身になってしまったからなのか原田芳雄自身の母への思いが交錯したからなのか、(両方ですね。きっと)最後の母への言葉は感動そのものでした。