『吠える犬は噛まない』ネタばれあり

先日、借りたビデオを一日延滞して返しました。
しかし、『夢二』は映像が悪く、赤く写って、音声も聞き取れないため途中で断念、いかにも清順さんらしくて、なかなか面白かったのですが。
もう一本、ららさんにもお奨め戴いたポン・ジュノ監督『吠える犬は噛まない』は、なかなか面白かったです。高志さんは、最後まで観れなかったといわれていましたが、その気持ちも分かります。ドラマだと分かっていても、犬が虐待されるシーン、愛犬家ならなおのこと、観れませんよね。それと、最後が多少気になりました。
韓国の高学歴社会の現状。大学でいいポストを得るために教授のつけとどけをするわけですが、こういうことが実際に行われていて、いわば、社会的に悪しき伝統でありながら、よくあることとして黙認されているからこそ映画として成立するということがあるのだと思います。だからこそ、最後には、妻の退職金をケーキの箱の底に入れて教授に渡し、大学教授になる。こういうことは、日本でもありうることなのだけれど、社会的に認知されてはいない。日本映画でこのことを前提に描こうとすると無理があるとおもいます。
そういう意味で、少しづつ変わり行く韓国社会を描いているわけですが、付け届けをして教授になった主人公が高学歴社会から逸脱した少女たちが山を散策するのを遠く見やり、ここに韓国社会が変わり行く可能性を見出すという最後のシーンに、どれだけの説得力があるか。高学歴社会と、そこを逸脱した社会とをまみえることなく対比しただけに終わってしまってはいないか。そんなことを思いました。日本映画の現在にとって、このテーマはすでに過去のものになっているのではないか。それだけ、日本社会が多様化しているということのように感じました。
しかし、韓国映画一般の魅力として、喜怒哀楽。その振幅が大きいということがあります。そして、この映画はその魅力を充分もっています。
子猫をお願い』に出演していたペ・ドゥナが『子猫をお願い』以上に魅力的です。最後の方の走るシーンは殊に記憶に残るシーンでした。