『暗殺・リトビネンコ事件』監督:アンドレイ・ネクラーソフ

azamiko2008-01-10



今年の映画事始めは、ときどき映画情報をいただいている『粉川哲夫の【シネマノート】』で5つ☆をつけておられたドキュメンタリーです。
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2006年11月亡命先のイギリスで放射性物質ポロニウム210を何者かに盛られ毒殺された元FSBロシア連邦保安庁)中佐、アレクサンドル・リトビネンコが生前ネクラーソフのインタヴューに答えたテープを中心に、緊急病室のベットに横たわる姿、葬儀の様子、関係者へのインタヴュー、ロシアの現状。
前半めまぐるしく変わるフィルムにちょっとついていけない場面もありました。


経済復興の影で、ロシア国内の状況がひどいというのは聞いてはいましたが、社会主義国のロシアで年金生活の老人たちが民間団体の配食を受けている。
一方で、莫大な資産を秘匿しているといわれるプーチン
テロリストによる犯行と政府発表されたチェチェンでの爆撃事件が、実はFSBによるものだという。
いったい、ロシアはどうなってしまったのでしょう。


リトビネンコの前近代的な、スパイ映画のような暗殺事件は長くよどんだ澱のような独裁体制の中で起こるべくして起こったことなのでしょう。


リトビネンコの死の一ヶ月前には、プーチン政権、チェチェンに対するロシアの政策にきびしい批判を展開していたジャーナリスト、アンナ・ポリトコスカヤが自宅アパートエレベーターにのり込むところを銃殺されています。
次々に殺害される反体制活動家。


映像の強み、人びとの表情は如実に捉えられています。
アンナ・ポリトコスカヤの穏やかだが、決してひるむことのない生前の姿、表情。


うすくらい密室で撮られたネクラーソフのインタヴューに答えるリトビネンコの肉声、表情、変わり果てた緊急病室で横たわるリトビネンコのうつろなまなざし。


中学卒業後、入隊し、KGBFSBに所属していたリトビネンコ自身、国のためと信じ、諜報活動をしてきたはずです。
それが間違いだったと気づいた彼のどうしても残しておかなくてはいけないと思った証言、それをフィルム化することもまた、身に危険のあることのはずです。
どのような状況であっても、なんとか現状を変えていこうとする人々がいる。
そのことに勇気づけられ、ペシミズムと事なかれは挑発されます。