[美術]『アートで候 会田誠、山口晃展』@上野の森美術館

azamiko2007-06-18



会期も19日までと迫った17日。
会場は若い人でかなり混んでいた。


会田誠が芸大を卒業する時の文集に「・・・人類史的に正統な職人的、奴隷的芸術家を目指してゆく所存である。勤勉と忍耐のみである。形式と技術のみである。・・・」と、書いている。MONUMENT FOR NOTHING
職人的、奴隷的、勤勉と忍耐でつくりあげた大作、『ジューサー・ミキサー』と山口晃の『日本橋三越』『芝の大塔』『広尾ー六本木』などの絵巻物にみられる作品とは、勤勉と忍耐でつくりあげたものであっても少し違う。
どちらもその圧倒的な細部の描きこみに驚嘆するのだけれど、会田の作品には出来上がったひとつとしてのコンセプテュアルな、あるいはギャグ的なものに力点があり、山口晃の作品には、細部の物語性自体をテーマにしているようだ。


会田誠は縦横無尽にやっている。
ニューヨークが空爆され燃え上がっている上空に無数のゼロ戦が隊列を組んで8の字状に旋回している『紐育空爆之図(にゅうようくくうばくのず)』
パルテノン神殿の上には広島の原爆ドームが重なった『題知らず』
はたけから、掘り起こしたヴィトンのバックを掲げ、袷を着たおじいさんが「今年もヴィトンが豊作じゃ」と叫ぶ『ヴィトン』
ひょろひょろと伸びた手足のような枝木に少女の頭の乗っかった『愛ちゃん盆栽』(あやしい)
『ポスター(全18連作)』は小1から中3まで、こどもの描くポスターを模して描いた作品。子どもの素直な目と「教育」へのアイロニーとが込められている。
こたつに入って日本からメッセージを送るビン・ラディンだったり、少女に変装して、セルフポートレートを撮る会田誠はおかしい。
学生時代に書いたお話には思わず泣いた。
ミツバチが美味しい蜜を求めて行き着いた先が、ビルの谷間の貧しい日の当たらない親子の住む内職でつくっている造化だったというのは会田誠の原点のような気がする。


山口晃の絵には安らぎがある。山口晃作品集
『四天王立像』にみられるような画力のすばらしさもさることながら、俯瞰する絵巻物に描きこまれた細部をみれば、人びとの営為を肯定的にみているのが感じられる。
『すずしろ日記』なるマンガのこまわりのように描かれた作品には、有名画家としてヨーロッパで展覧会や優雅な接待を受けるという妄想日記もあったりして、おかしい。
カタログに掲載されている理想の(?)『アトリエ探訪』と「仕事場リアル探訪」の自嘲的な絵そのものの描き方の落差も漫画的でおかしい。
『携行折り畳式喫茶室』というプラスティックの波型のトタン板で作った一畳ほどの茶室は藤森照信の茶室のパロディーなのか。おかしい。


あ〜、ひさびさに、おもしろくて、愉快な展覧会であった。