衆議院選を終えて

投票結果をみて、再び思い起こすのは、鶴見俊輔さんが『思想の科学・公開シンポジウム』で言われていた

民主主義とファシズムはいわば、セットであるといっていい。民主主義の退廃したところにファシズムが起こる。民主主義が実現したと安心したところにファシズムが立ち上がってくる。

という言葉にほかなりません。
１０日にバーチャル政党老人党から派生したリアル政党「護憲＋」主催でなだいなださんの講演を聞く機会がありました。
なださん自身は民主主義にも、護憲ということに対しても距離を感ずるアナーキストであると言われていましたが、フランス滞在中にフランスの選挙を見ていて感じたのは、選挙前には１０分の１の声でしかなかった意見が、賛成するにしろ反対するにしろ、小さな意見も議論され、その議論が短い選挙期間内でも有権者に伝わり、EC案をひっくり返す結果になった。と言われていました。
今回の選挙、アメリカからの選挙資金が大量にマスコミに流れたといわれていますが、有権者に情報が正しく伝わらないということと同時に、言葉が言葉として交わされ、中味がちゃんと、議論されただろうか、それを聞いて、有権者が正しく判断しようというところになっていただろうか。自民党は郵政民営化を実現するために主婦、若年、年寄りのＢ層（ＩＱの低い層）を狙う戦略をたてたといわれていますが、議論しないことを前提にした選挙戦略が、日本の政治の実態だということを端的に示しています。
また、なださんはニューオーリンズの災害後の状況、弱者を切捨て、援助物資を届ける前に武装した兵士が被災者に銃を向けるという姿をみれば、日本が追随しているアメリカという社会の浮き彫りにされた問題が充分すぎるほど分かるはずなのに、そのことを選挙で語ろうとしない野党の「喧嘩」の下手さということも言われていました。
遠いアメリカの話としてしか想像力のはたらかないということもあるでしょうが、自分の生活と直結してしまうことを想像することの恐怖が、力の弱い、ターゲットにされた主婦、若年、年寄りをはじめとした有権者にむしろ、今の状況にしがみつこうとさせてしまう結果になったのではないかと思えてなりません。むしろ、いろんな不安があるからこそ自分の生活を守ろうと現状にしがみつかせているのではないか。なんとか、零れ落ちないようにしがみつき、自分の腰あたりにしがみついているものが、力尽きて落ちてゆくのを、むしろほっとながめているのじゃないかと。

つけ鼻をつけて小泉純一郎になりきった『THE　NEWSPAPER』の松下明 さんのコントもありました。

―サラリーマン増税。もちろん、やります！いやー、みなさん、怖れることありませんよ。サラリーマンは、いなくなります。総フリーター時代がやってきますから！

―年金問題？破綻するんじゃないかと不安をお持ちかもしれませんが、そんなことはありません。解決策はあります。簡単です。要は掛け金を払う人ともらう人のバランスを変えればいいんです。定年を９５歳にすればいい。９５歳まで働いて掛け金を払い続ける。９５歳から受給する。ほら、簡単でしょう！？

笑っていられる内はいいけれど・・・（＾−＾；
ますます、貧富の格差は広がり、もつものともたざるものとの緊張や社会不安が増大してゆくアメリカ型社会がやって来ます。
鳥越俊一郎氏が選挙前、ニューオーリンズの被災地の状況に触れながら、

今回の選挙は弱者を切り捨て、強いものの意思に従った政治のアメリカ型の社会を目指すのか、たとえ、いろいろな違いはあったとしてもすべての人と共存しようとする社会を目指すヨーロッパ型の社会を選ぶのかという選挙である

と言っていましたが、結果的に日本の有権者はアメリカ型社会を選択したということでしょうし、圧倒的中流意識の日本にあって、よもや自分が切り捨てられるとは思ってはいない反面、どこかで、切り捨てられる側になるかもしれないという不安感を抱えているからこその結果だったのではと思います。
「年をとったら、海外で」と考えている人はまわりを見回しただけでもけっこういます。アメリカ型社会を嫌悪し、ますます、日本脱出を考えるひとは増えていくのではないでしょうか。
そして、それを非難することは誰にもできません。

＃東大寺三月堂の回廊

ＣＮＮ. ＵＳＡhttp://www.cnn.co.jp/usa/usa.html
ＣＮＮ，ハリケーン被害http://www.cnn.co.jp/hurricane/
ハリバートンなど米政権関係企業、ハリケーン復興を受注についての記事http://www.cnn.co.jp/hurricane/CNN200509110008.html
ニューオーリンズの批評的抵抗組織サイト
http://www.criticalresistance.org/index.php?name=New-Orleans