[美術]『金刀比羅宮 書院の美 応挙・若冲・岸岱−』@東京藝術大学美術館

azamiko2007-08-19



すばらしい襖絵の数々にしばしことばを失いました。
金刀比羅宮の書院に描かれたこれら襖絵は、さぞや訪れるものを魅了したに違いありません。
とはいうものの、表書院、奥書院に上がることができたのは、ごく一部のものだけだったでしょう。


絵のすばらしさに留まらず、襖絵の可能性が最大限に生かされていることにも驚きです。



三面に8頭の虎を描いた円山応挙の「遊虎図」(1787年)は虎というよりも猫の肢体を思わせます。

当時日本では虎を目にすることができず、毛皮から、猫をモデルに描かれたのでしょうか。
毛の一本一本まで描きこむ写実的な画力に圧倒されます。
三面の襖の角を生かして、岩を配し、「八方睨みの虎」といわれる虎は、座してみることを意識したとか。

若冲の「花丸図」(1764年)の過剰さには、ただただ圧倒されます。
金地に襖ばかりか部屋の隅までびっしり等間隔に微細に花が描かれ、図版的緻密さと絢爛さ、部屋の一部を再現しただけにもかかわらず、むせ返るようで、四面を花に囲まれたこの茶室に足を踏み入れたなら眩暈してしまいそうです。


岸岱(がんたい)の独創性にも感心しました。
四面に描かれた「水辺柳樹白鷺図(すいへんりゅうじゅはくろず)」(1844年)は白鷺が飛び立ち、舞い、柳の樹の水辺であそぶ姿がアニメーションのように13羽描かれています。
絵巻物が日本のアニメーションの源流だというのは、絵巻「山中常盤」を観た時に知ったことですが、
襖の大きさから白鷺の美しさと柳の風情がなおいっそう眼前で繰り広げられているような臨場感と迫力とを感じさせます。


また、襖の上の壁面に描かれた「群蝶図」
いろいろな蝶が一方向に向かって舞ってゆく幻想的なこの絵に岸岱への興味はますますかきたてられます。

1902年に描かれた、邨田丹陵の「富士巻狩図」にも過去の作家から学んであろう創意工夫や独創性が示されていました。


富士山が四面に描かれ、その裾野を描いた次の間には、鹿狩りの武士の一群が、遠く描かれ、次第にクローズアップされ、鹿狩りのシーンは臨場感と躍動感あふれる場面構成になっています。


描かれた時代がそれぞれなのは、破損や色やけなど、後の時代の作家によって、描きかえられているからですが、描きかえられる前の絵は?・・・もはや、観れないのがとても残念です。




常楽寺の石像